新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより、HIVやマラリアなどの感染症対策等が負の影響を受けていることが明らかになっています。
ACTアクセラレーターの治療部門を担うユニットエイドは2021年11月30日の声明で、COVID-19パンデミックの影響で、20年のHIVの検査・治療数が前年を下回ったとし、減少に転じたのは過去20年間で初めてのことであると述べています。世界には、いまなお3700万人以上がHIVと共に生きており、そのうちの推定610万人が自分の状態を知らないため、検査を受けることは治療にアクセスするための重要な第一歩です。検査を増やすためには、保健所等に行かなくても自分で診断できるセルフテストが有効であり、この数年間で各国が政策に組み込んできたHIVのセルフテストのさらなる拡大が必要です。しかしながら、ユニットエイドによれば、25年までに低・中所得国で必要とされる1億9200万回分のセルフテストキットのうち、調達の見込みが立っているのは、約2900万回分に過ぎず、そのための資金も約1億400万ドル不足しています。
一方、世界保健機関(WHO)の「世界マラリア報告書」によると、COVID-19のパンデミックによってマラリア対策が混乱し、患者数と死亡者数が著しく増えていることが明らかになりました。20年のマラリア患者は推定で2億4100万人にのぼり、62万7000人が亡くなりました。前年と比較とすると、患者数が約1400万人、死者数が6万9000人それぞれ増えています。WHOは、死者数増加の3分の2にあたる4万7000人が、COVID-19のパンデミックによる予防・診断・治療の提供中断に関連しているとしています。
また「女性・子ども・青少年のためのグローバル・ファイナンシング・ファシリティ(GFF)」は、COVID-19パンデミックによる保健医療の逼迫・崩壊によって、COVID-19による死者数の2倍の女性や子どもが死亡しているとの調査結果を発表し、保健システム強化への一層の支援を求めています。