さらに報告書は、ACT-A自身に帰する課題について、①範囲と目的②運営モデル③資金④より広範なエコシステム、の4つの観点から分析し、改善点などを示しています。
範囲と目的をめぐる分析・提言では、ツールを現場に届けるために、物流において、より現場に近い「下流」部分の支援強化と、成果指標による裨益者への影響モニタリングが必要だと指摘しています。具体的には製品の調達と流通を喫緊の優先課題とすることを求めています。またACT-Aの部門ごとにも課題を具体的に示しています。例えば、検査部門では、検査キットが多数開発されているにもかかわらず、WHOの緊急使用リストに掲載されているのがわずか4つしかないことを指摘し、承認プロセスを加速するよう求めています。治療部門では、既存薬剤の転用に過度な期待をしすぎた、と指摘。またCOVAXのような仕組みがないため、今後、ワクチン同様、高所得国による買い占めが問題となる可能性に警鐘を鳴らしています。またACT-Aが提供できる製品や支援、財政的な選択肢について、各国にきちんと情報提供すべきだとしています。またこうした役割の担い手として、保健システム強化を担う「ヘルスシステムコネクター」部門を挙げ、国ごとの準備状況が異なる中で、こうした差を埋める支援にあたるべきだとしています。
運営モデルをめぐる分析・提言では、本来、ACT-A全体を見渡して意思決定をする機関である運営理事会が必ずしも十分に機能していない点を挙げ、権限や内部調整が時に不透明な、複雑なモデルになっていると指摘しています。また運営理事会の構成が高所得国に偏っている点や、コミュニティレベルでのニーズに合わせた、明確でアクセス可能で集約された情報とコミュニケーションが欠如している点などを指摘し、低・中所得国や市民社会、コミュニティ代表の参画を高めることや社会的に脆弱な人々にもっと目を向けることなどを強く求めています。
資金をめぐる分析・提言では、各部門の担い手機関・組織だけでなく、運営理事会が主導して、資金拠出のアドボカシーや需給ギャップの記録、資金集めなどを担うべきだと指摘しています。また世界銀行や地域開発金融機関に対し、その資金をACT-Aで活用できるよう、これまで以上に連携を図るように提言しています。
より広範なエコシステムをめぐる分析・提言については、ACT-Aとして、一貫したメッセージを発信し、対外的な認知を一層強化すべきだと指摘しています。
報告書は、これらの提案がACT-Aの短期・中期的な調整や最適化を目指すもので、速やかに実行に移されることを求めています。