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ACT-A WATCH

「縁の下の力持ち」個人防護具 にイノベーションを

保健システム声明・報告書
インド・ムンバイの病院に設けられたCOVID-19の臨時診療スペースで、個人防護具を身につける医師 © The Global Fund / Atul Loke

(写真)インド・ムンバイの病院に設けられたCOVID-19の臨時診療スペースで、個人防護具を身につける医師 © The Global Fund / Atul Loke

医療従事者が身につける、マスクやガウン、手袋、ゴーグルといった個人防護具(PPE)は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行する以前から、医療サービスの提供や爆発的感染の対応や抑制にとって必要な物でした。コロナ禍の医療現場でも、感染連鎖を防ぐために最も大切な役割を果たしています。しかし現場に十分行き渡らない一方、つけやすさや効果の面でも改良の余地があるとされます。

ACTアクセラレーター(ACT-A)の保健システム部門の実施を担う「グローバルファンド」が中心となり、専門家50人の知見や分析などを集約して、PPEを再評価するとともに、デザインや品質、製造、流通などの分野でイノベーションや連携を促す提言書「医療用PPEエコシステムの転換」(Transforming the Medical PPE Ecosystem) が公表されました。

グローバルファンドのピーター・サンズ事務局長とウェルカム・トラストのジェレミー・ファラー会長は、連名で寄せた序文の中で、「COVID-19のあらゆる対策の中で、PPEに向けられる関心は最も低い。コミュニティでの伝染を抑え、保健医療従事者を守るために重要な役割を果たしてきたフェイスマスクは、コロナ対策における陰のヒーローだ」と述べています。一方で「国際的なバリューチェーン、あるいはエコシステムの中で、まだ多くの脆弱さを抱えている」と指摘しました。具体的には、著しく不公平なアクセス、品質や調達プロセスの問題、イノベーションの欠如、コミュニティのヘルスワーカーらに行き渡らない配備をめぐる課題、効率的な使用などを挙げています。

提言書は、ワクチンや検査・治療薬などと並び、PPEを世界規模での課題として位置付けることが重要だとしています。費用対効果で見ても、PPEは、他のいかなる方法よりも多くの命が救え、「失われる将来の生産性だけを計算しても、初期投資の100倍近くのリターンがある」との試算を示し、より多くの資金の必要性を訴えています。

またワクチン分野ではCEPI(感染症流行対策イノベーション連合)、検査部門ではFIND(診断技術革新推進財団)といったような、コーディネーションを担う組織がPPEには存在しない点を指摘し、医療機関、国際開発金融機関、研究機関、製造業者などの連携が課題解決には不可欠だと強調しています。具体的には、政府、製造業者、国際機関 などに対して、「イノベーテブな研究・開発(RD)」 、「品質・検査」 、「製造」、「調達と配備」、「利用と廃棄」の5つの段階からなるPPEエコシステムで、一層緊密な連携を深めることを求めています。

(『ACT-A WATCH』第3号より)

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