(写真)日本政府はバングラデシュに対し、約290万回分のワクチンの提供を約束しており、COVAXを通じて最初に送られた245,200回分が2021年7月24日に到着しました。© UNICEF/UN0493031/Sujan
新型コロナウイルス感染が急拡大する中、日本政府はこの事態を「多面的な脅威を伴う人間の安全保障の危機」と位置づけ、また途上国を含め、すべての人が質の高い医療・保健サービスを支払い可能な価格で受けられる「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)」を推進している立場から、ACTアクセラレーター(ACT-A)を2020年4月の発足当初から支持してきました。
翌5月に欧州連合(EU)が主催した首脳会合で、安倍晋三首相(当時)はビデオメッセージを寄せ、国内外において治療薬・ワクチンの開発を推進していること、それらへの公平なアクセスが重要であること、医療体制の脆弱な途上国に対し保健システム強化のための支援を拡充していることを強調し、日本として応分の貢献を行うことを表明しました。また全体のガバナンスを担う運営理事会(ファシリテーション・カウンシル)のメンバーとなりました。
2021年4月16日(米国時間)にワシントンD.C.で開かれた初の対面での日米首脳会談では、新型コロナウイルス感染症対策についても意見が交わされました。会談終了後に発表されたファクトシート「日米競争力・強靱性(Competitiveness andResilience; CoRe)パートナーシップ」の中の「新型コロナウイルス対応、グローバルヘルスおよび健康安全保障」において、ACT-Aへの両国の支援強化が表明されました。
具体的には、「COVAXファシリティを含むACTアクセラレータへの両国の支援を強化しつつ、他のパートナーにも同様の対応を奨励することで、特に開発途上国における安全かつ有効で手頃な価格のワクチン、治療薬及び診断への公平なアクセスを確保するための資金的ニーズを協力して満たしていく」とし、両国が協力して支援していくことが言及されました。
米国の国際政治学者、イアン・ブレマー氏が率いる調査会社ユーラシア・グループは20 年11 月、「ACT- Aプログラムへの日本の貢献:グローバルリーダーシップを再確認する」と題する報告書を発表しました。その中で、新型コロナウイルスのワクチンが世界に公平に行き渡れば、日本を含めた先進国が経済的な恩恵を受けると指摘する一方、UHCや人間の安全保障を主導してきた日本にとって、ACT-Aへの貢献は国際社会での日本のリーダーシップを改めて確認する機会だと述べています。また米中対立が深まる中、日本の貢献は、地政学的な観点からも重要だと主張しています。
(『ACT-A WATCH』第1号より)